NPO日本移植支援協会

専門家の意見

星野 健 先生

北海道大学病院
臓器移植医療部(診療教授)
嶋村 剛 先生


2023年

北海道における移植医療は1965年の生体腎移植から始まりました。米国での一卵性双生児間での生体腎移植成功から9年後、東京大学での国内初の長期生着を目的とした生体腎移植実施の翌年のことです。1968年には国内初、世界30例目となる心移植も札幌で実施されています。腎臓移植に関しては、その後1980年に第1例目の献腎(心停止後)移植が行われるとともに、アメリカから空輸されたいわゆるUS腎移植も盛んに行われた歴史があります。これらは開拓者のフロンティア精神はもちろんですが、目の前の患者さんを元の生活に戻したいという医療者の本懐に由来したものだったと思います。肝臓移植の本格的始動は、米国ピッツバーグ大学から北海道大学外科に藤堂省(さとる)教授が赴任された1997年の生体肝移植でした(2001年には第1例目の脳死肝移植を実施)。また、やや遅れたものの心臓移植も2014年に第1例目が実施されています。現在、北海道大学病院は道内唯一の心臓、肝臓、膵臓移植実施施設であり、腎臓移植・小腸移植の中心的役割も果たしています。さらに、肺移植と膵島移植の開始に向けても準備を進め、近い将来、すべての臓器移植を患者さんに提供できると考えています。

日本では本来、緊急回避的な医療であるべき生体移植が主流になってしまった歴史がありますが、1997年の臓器移植法制定、2010年の法改正を経て、脳死下臓器提供による移植が増えてきました。実際、肝臓移植では生体移植は年々減少し、脳死移植の増加(肝臓移植全体の17%)は移植を希望される患者さんへの朗報となっています。2019年に97例まで増加した脳死下臓器提供はコロナ禍の影響もあり2年間ほど減少に転じましたが、今年は100例を超えると予想されています。国民の理解と医療者の努力により臓器提供・移植医療への認知・理解が進んだ結果と考えています。この間、小児からの臓器提供も増え、移植を待機しているお子さんへの希望も増しました。しかし、まだまだ十分とは言えず、待機中に亡くなる方も多くいらっしゃいます。この問題を解決すべく1998年に臓器移植推進を目的としたNPOを立ち上げ、現在、(公益財団法人)北海道移植医療推進財団として活動を続けています。移植実施と臓器提供は移植医療の両輪であり、いずれも移植医の責務と考えるためです。広い北海道を網羅すべく札幌本部+3つの支部と3委員会:総務企画委員会、移植医療委員会、移植者委員会で活動を続けています。その結果、人口比では全国で最も臓器提供の多い地域となりました。

移植医療はみんなで作る医療です。日本移植支援協会も移植医療啓発活動や患者家族のサポートを通じてこれまで数多くの方を支援されてきました。先日お会いした高橋理事長の熱意はゆるぎなく、ご指導頂きながらこの国の臓器移植を一緒に推進していきたいと思っております。ドイツで長く心臓移植に携われた南和友教授のお言葉通り「助けられる命を助けられる国に」を目標に邁進したく存じます。

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