NPO日本移植支援協会

専門家の意見

岡嶋 良知 先生

千葉県こども病院
循環器科
岡嶋 良知 先生

私自身、移植医療に関わったのは初めての経験で(骨髄移植の下働きは大学にいた頃にやりましたが。)、とにかく分からないことだらけでした。 しかし、実際に関わって、心臓移植は今さらながら大変に有意義であることが確認できましたし、率直に、この治療が広まればいいと切望しております。 今回の活動では、私の患者の募金活動が本当に予想以上にスムーズに運び、事務局を引き受けてくださった方々や皆様の暖かい御支援の賜と感じ入っております。

とは言っても、今後もいつまでも今回のようにスムーズに話が運ぶとは限らず、患者さんやご家族の負担を考えますと、移植が実現する機会が少ない上に、未だに脳死基準の判定すらスムーズに行かない場合が多く、医療不信を招きかねない状況にあると思われます。 そのような状況で、小児の脳死を認めてもらうためには大きな障害になるのではないか、と危惧しております。 やはり、根本には国民の医療機関、医師に対する不信感が有るものと推察されます。

また、実際、医療側においても、今日まで、日本の一般的な医師は、脳死移植医療に関わる機会が殆どなく、真剣に考える必要性が有りませんでした。 そのため我々がスムーズに移植医療を行える準備を十分にできていないのが、実情でしょう。 まだまだ不勉強です。柳田邦男氏が最近出した「緊急発言 いのちへⅠ」に、救急医療の現状として、救急医療体制や脳死患者への対応の不十分さを指摘しています。 言われればもっともで、臓器提供側に対する医療体制があまりにも未整備のままで、移植医療を推進することに疑問が有りそうです。

このような意見を認識して、移植医療に対する国民の理解が進むことが非常に大切であると痛感しています。 私自身、移植しか助かる道はない、と宣告した患者さんを何人も診てきましたが、海外移植までを真剣に考える患者さんがいなかったので、本当に貴重な経験をさせていただいたと思っております。

今後は少しずつでも、まずは勉強してと思っています。 貴哉君が帰ってきたら、やはり小生が診療したいところですが、ただ、知識不足はやむを得ず、移植医療の先輩に相談していかないといけません。 医療側も体制をしっかりと考えないと、せっかく多数の方々から頂戴した善意が無駄になってしまうという緊張感を感じつつ、戸惑いつつ、彼の帰りを待っているところです。

心臓移植は御協力をしていただいた方々の善意に支えられた素晴らしい医療だと思います。重い心臓病で困っている国内の子供たちにも、早く実現することを願っております。

Back