東京大学医学部附属病院 |
この度、第9回日本移植・再生医療看護学会学術集会を開催させて頂くことになりました東京大学医学部附属病院看護部長の小見山智恵子と申します。実りある集会となるよう、皆様のご指導ご支援を頂きながら、事務局一同準備を進めてまいります。どうぞよろしくお願い致します。
さて、移植・再生医療や看護を取り巻く環境は、ここ数年大きく変化しています。 2010年の改正臓器移植法施行の後、脳死下臓器移植の件数は増加しており、臓器提供や移植に対する社会の認識も少しずつ変化してきているように感じられます。また、京都大学の山中伸弥教授がノーベル生理学・医学賞を受賞したことによって、社会の再生医療に関する認知度や期待も一気に高まっています。
このような背景の中、私たちは移植医療・再生医療にどのように向き合い、看護をどのように発展させていくのか、見つめなおす時期に来ていると思います。ドナーという存在を必要とする移植医療、そして特殊な細胞を用いて行う再生医療に関わる医療者は、まず、常に人間の生命や健康、尊厳や人権に配慮できることが求められるでしょう。そして、患者さんに寄り添い治療過程に応じて日常生活を援助すること、ご家族を含めた関係者の意思決定を支援すること、患者さん自身が自律した生活を構築できるように患者さんやご家族に働きかけること、周囲のサポートや資源を活用し社会復帰を支援することなど、看護師自身の実践が求められていると思います。 患者さんやご家族とともにさまざまなことを実現していくためには、医師やレシピエント移植コーディネーター、多職種の関わりとともに、その患者さんやご家族に日常的に関わる看護師の役割も大きいと思います。
患者さんやご家族の日常生活や想いを知り、関わる看護師だからできること。医療チームの一員として、調整や連携を行う看護師だからできること。患者さんやご家族の葛藤を感じながら、自分自身も葛藤する私たちだからできること。そして、患者や家族に寄り添い、励まし、支え続けること。移植や再生医療、看護に携わる人たちの日頃の気持ちや思いを伝えられる場にしたい、自分たちが実践している看護の価値を考えたいと思い、第9回学術集会のテーマを「移植・再生医療~看護師だからできること~」と致しました。 看護師が、移植や再生医療を受ける患者さんやご家族に関わる場所や状況は、さまざまです。それぞれの場面で成果を上げていること、もっと力をいれて実践すべきこと、患者さんやご家族のご要望、あるいはチーム医療の円滑化のために工夫すべきことなどなど、さまざまな側面から「看護師だからできること」を考えられる集会に出来ればと思っております。