藤田医科大学病院 2022年 |
藤田医科大学病院は、2022年6月1日現在、臓器提供件数263件(うち脳死下臓器提供13件)、臓器移植685件(腎移植501件、膵移植98件、肝移植86件)の実績を有しており、日本の移植医療の先進施設となっています。私は、腎移植、膵臓移植、膵島移植の臨床と研究に加えて、当院および愛知県の臓器提供の推進活動も行っています。
1997年に臓器移植法が、2010年には改正臓器移植法が施行され、日本でも脳死下臓器提供の法的整備と日本臓器移植ネットワークによる臓器斡旋システムが整備されました。確かに改正臓器移植法施行後に、脳死ドナー数は増加しましたが、心停止ドナー数が減少し、年間約100例に留まっています。この数は世界の先進国では最低レベルであり、スペインの50分の1、アメリカの40分の1、韓国の8分の1という数です。何故なのだろうか・・・これは、私が千葉大学を卒業し医師となった時代から、すでに30年以上が経ちますが、変わらない疑問となっています。
現在私は臓器提供数増加の活動として、藤田医科大学病院の移植医療支援室長として、院内の臓器提供システムの改善、院内コーディネーターの配備、移植コーディネーターの教育のための大学院開設などに取り組んでいる他、NPO法人あいち臓器提供支援プログラム(AODA)の理事として、また厚生労働省・日本臓器移植ネットワークの事業である「臓器提供施設連携体制構築事業」の拠点施設として、地域での臓器提供推進に力を入れています。おかげで、この数年の愛知県の臓器提供数は、全国で1位~3位で推移しています。私は、何故日本では臓器提供数が少ないかを常に考えていますが、「脳死」という言葉が原因なのではと思います。“脳が死んでいるけど、心臓が動いているから体は生きている”と言う人もいますが、そんなことはないのです。人生の終わりとしての死は一つです。脳死も心臓死も生物学的な死としては同じです。ただ医学の進歩で人工呼吸器などの生命維持装置ができたため、一定の期間脳死状態が維持され、臓器提供できるのです。これからは、このことを少しずつ理解していただくような活動を続けたいと思います。
私の本業は移植外科医であり、腎移植、膵移植、膵島移植を専門にしています。日本の臓器移植成績はすべての臓器で世界トップです。腎移植で、透析から解放された患者さん、膵移植でインスリン治療から解放された患者さんは、それまでの長い闘病生活を経て、見ちがえるほど元気になります。いのちの輝きがあふれています。そういう患者さんを診ていると、本当に移植医療のすばらしさを感じます。でも、この素晴らしい医療を支えているのは、私たち医師ではなく、尊い命の贈り物である臓器を提供していただいたドナーの方、ご家族の方であることは言うまでもありません。また移植医療はチーム医療です。医師、看護師、移植コーディネーターなどの医療関係者と、日本移植支援協会や患者会をはじめとする支援団体の力が必要です。これからも、微力ながら日本そして世界の移植医療の発展に尽力してゆきたいと考えています。何卒ご協力の程お願いいたします。