NPO日本移植支援協会

専門家の意見

星野 健 先生

成育医療研究センター
病院長,医学博士
賀藤 均 先生


(2021年)

国立成育医療研究センターでの移植医療

 国立成育医療研究センター(以下、NCCHD)は、国立がん研究センターなど国内に6つある国立高度専門医療研究センター(通称NC:ナショナルセンター)の一つで、小児と周産期(産科・不妊・新生児)を専門としています。NCCHDには病院と研究所があり、診療と小児希少疾患・難病の研究、新規の治療法開発などを行なっています。

 NCCHD病院の診療の大きな柱として移植医療があり、肝臓、腎臓、小腸、心臓、骨髄の移植が可能です。小児における肝臓移植件数は世界一、小児骨髄の移植件数は全国最多、小児腎臓移植件数も年間に10件以上となっています。小児の小腸移植は日本で初めて実施しました。小児心臓移植の認定施設になったのは最近で、まだ、心臓移植は実施できておりません。コロナ禍の今でも、NCCHD病院では毎週、何らかの移植医療が実施されており、病院スタッフにとって身近で普通の医療となっています。

 この度、日本移植支援協会様から、小児用体外式補助人工心臓であるEXCOR ○RPediatric一式2セット購入資金のご寄付をNCCHDにいただきました。心より御礼申し上げます。お陰様で、2021年4月18日、4月23日にそれぞれ1台ずつEXCOR ○RPediatricが納入され、当院はEXCOR ○RPediatric5台を保有することとなりました。これで心臓移植を希望される3人のお子さんに補助人工心臓を使用できるようになりました(現在、EXCOR ○RPediatricを3人以上に使用する場合は2台を予備として保管しなくてはならないという規定がありますため、5台で3人しか使えません)。

 国内での小児心臓移植件数は、一時期増加したのですが、新型コロナウイルス感染症のパンデミックに陥ってからは、ドナーの減少で大きく減りました。それでも、心臓移植が必要なお子さんは増えており、EXCOR ○RPediatricの数が足りないという厳しい状況が続いています。特に、関東では関西に比べて、EXCOR ○RPediatricの保有台数が少ないため、関東在住の患者さんを関西の施設に転院していただくという苦渋の決断をせざるを得ないこともありました。ご家族がバラバラになってしまうことを考えると大変申し訳ない気持ちでいっぱいです。

 今回の日本移植支援協会様からのご厚意は、このような状況を鑑みても、本当に嬉しく、心臓移植を希望されるお子さんの家族にとって大きな励みになるものでした。改めて御礼申し上げます。  NCCHDでは、新しい方法として、ES細胞から肝細胞を作成して、それを新生児の門脈から注入する肝細胞移植も開始しました。現時点で、この治療は先天性代謝異常症の新生児が肝臓移植が実施可能な体重になるまでの橋渡し治療の役目ですが、今後発展させて行きたいと考えております。今後も、NCCHD病院は、小児移植医療の発展に貢献できればと考えております。何卒、ご支援のほどお願い申し上げます。

Back